学習心理学

記憶力を上げるためには、考えることが大切。

記憶力を上げることは、中学生・高校生にとっては、テスト成績に直結しており、とても大切なことです。しかしながら、なかなか記憶が出来ずに、点数が上がらない人が多くいることも事実です。

記憶力を高める方法にはさまざまなものがあります(Bradshaw & Anderson, 1982; Myers et al., 1987; King, 1991; Karpicke & Roediger, 2008; Abel & Hänze, 2019)。例えば、単語学習において、単に長時間学習するのではなく、「単語を覚えているかどうかのテストを行う」、つまり積極的に記憶を想起することで、時間が経過しても単語の再生がしやすくなることが示されています(Karpicke & Roediger, 2008)。

このような知見がある一方で、今回は別の視点から記憶力を向上させる方法について述べたいと思います。その方法とは、「覚えることについて考えること」です。言い換えると、
覚える内容に関連する情報を収集すること
覚える内容と関連づけて理解すること
の2点が重要になります。

関連情報の収集が記憶力を高める

覚える内容に関連する情報を収集すること が記憶力向上に有効であることは、1980年代にはすでに示されていました(Bradshaw & Anderson, 1982; Myers et al., 1987)。例えば、Bradshaw & Anderson(1982)は、ある文章Aを被験者に提示し、それを単独で記憶する場合と、文章Aに関連する文章Bも提示してまとめて記憶する場合とを比較しました。 その結果、関連する文章Bを提示した方が、文章Aの長期的な記憶保持が向上する ことが示されました。このことから、記憶力を高めるためには、覚える内容だけでなく、それに関連する情報を収集することが重要であることが分かります。

関連情報を適切に関連づけることの重要性

しかし、単に関連する情報を収集するだけでは、記憶力向上にはつながらない ことも示されています(Abel & Hänze, 2019)。Abel & Hänze(2019)の研究では、関連情報を適切な接続詞を用いて整理・結びつけた生徒 と、関連情報を持っていても適切な接続詞で結びつけれなかった生徒 を比較しました。その結果、前者の方が記憶成績が良いことが明らかになりました。つまり、記憶力を高めるためには、単に関連する情報を集めるだけでなく、それを適切に関連づけ、整理して理解することが重要なのです。

どのような情報を関連づけるとよいのか?

では、どのような情報を関連づけるのが効果的なのでしょうか?Bradshaw & Anderson(1982)や Myers et al.(1987)は、「原因」や「結果」に関する情報を関連づけることで記憶力が向上することを示しました。ただし、関連づける情報は原因や結果に限定する必要はない可能性もあります。例えば、King(1991)の研究では、生徒に「具体例」「原因」「結果」「時間的順序」「未来の予測」など、さまざまな種類の情報を関連づけるよう支援しました。その結果、単に学習するよりも、学習内容の理解が長期間にわたって保持されることが確認されました。このように、記憶力を高めるためには、関連する情報を集めるだけでなく、それを適切に整理・関連づけることが重要である ことが分かります。

最後に

関連情報を集め、それを適切に関連づけることは、時間がかかり、大変だと感じる人も多いかもしれません。しかし、この方法は長期的な記憶保持に効果的であることが示されています。ぜひ試してみてください。※なお、このようなスキルを身につけるには、適切なトレーニングが必要です。「記憶力を高めろ!」と中学生・高校生に一方的に押し付けるのは避けましょう。

【参考文献】
Abel, R., & Hänze, M. (2019). Generating causal relations in scientific texts: The long-term advantages of successful generation. Frontiers in Psychology, 10, Article 199. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00199
Bradshaw, G. L., & Anderson, J. R. (1982). Elaborative encoding as an explanation of levels of processing. Journal of Verbal Learning & Verbal Behavior, 21(2), 165–174. https://doi.org/10.1016/S0022-5371(82)90531-X
Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. III. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966–968. https://doi.org/10.1126/science.1152408
King, A. (1991). Improving lecture comprehension: Effects of a metacognitive strategy. Applied Cognitive Psychology, 5(4), 331–346. https://doi.org/10.1002/acp.2350050404
Myers, J. L., Shinjo, M., & Duffy, S. A. (1987). Degree of causal relatedness and memory. Journal of Memory and Language, 26(4), 453–465. https://doi.org/10.1016/0749-596X(87)90101-X

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