先日の記事で紹介した通り、クラスの数人は該当すると考えられている算数障害。その障害の一つである数の感覚のつまずき。
その支援策について整理・紹介していきたいとおもいます。
数の感覚でのつまずきについても、複数の要因で生じている可能性があり、それぞれに対応した支援をしていく必要性が指摘されています。今回はその中の一つである「具体物や半具体物のおおよその量の把握」について紹介していきますが、それ以外にも「小さな数字と量の対応関係の習得」「大きな数字が示す量のおおよその把握」が存在します(Von Aster & Shalev, 2007)。
それ以外のつまずきに対する支援については後日、違う記事で紹介していこうかなと思います。
具体物や半具体物のおおよその数の把握の機能とは?
おおよその数の把握の機能は、点や具体物を10個と7個並べた時に、数え上げることなくどちらが多いか少ないかを瞬時に判断する能力になります。このような能力は数字(1,2,3etc)を使わなくても処理できるため、人間のみならず、動物にも備わっており、乳児期より徐々に発達していくとされていますが、算数障害を持つ児童・生徒はこの機能が弱いことが示されています(Piazza et al., 2010)。
また、この機能は数の感覚の基盤となるものと仮定されており(Von Aster & Shalev, 2007)、この機能が弱い児童・生徒に対しては、そこに合わせた支援が必要となります。
具体的な支援策としては大きく分けると2種類提案されています。どちらも集中的なトレーニングを行うことで、児童達の「おおよその数の把握の機能」の向上が見受けられました。
①具体物を用いて、おおよその数を学んでいく手法(Cheng et al., 2020; Wilson et al., 2006)
おおよその数を学んでいく手法の一つに具体物/半具体物を用いて、おおよその数を学んでいく手法があります。Cheng et al(2020) の研究では、図1のようなリンゴ集めゲームを算数障害児に遊んでもらうことで、おおよその数把握の機能を向上させました。
このゲームでは、できるだけ多くのリンゴを集めることを目指して、プレイヤーがキャラクターを動かして、落ちてくるリンゴを拾います。高得点を取るためには、同時に落ちてくるリンゴの量が多いかたまりを見分ける必要があり、それがおおよその数の把握の機能の向上につながると考えられます。
②半具体物を用いて学んでいく手法(Hyde et al., 2014; Van Herwegen et al., 2017)
もう一つは具体物ではなく、半具体物を用いて、おおよその数を学んでいく手法です。
Hyde et al., (2014)ではドットの数のを比較させてどちらが大きいか小さいかを判断させるトレーニングや、二つの画像のドットの数を合計したものと、最後に表示される画像のドットの数と比較してどちらが大きいか小さいかを判断するトレーニングを用いて、おおよその数の把握のスピードを向上させました。また、このトレーニングの結果、足し算の能力が向上することも示されています。
これら二つのゲームにピッタリと合致するゲームは市販されていませんでしたが、こちらのアプリ(Number kids)(図2)では様々な機能の発達に有効なものが組み込まれており、その中の一つに「おおよその数の把握の練習」もありました。ご興味ある人は是非遊んでみてください。私も該当する児童・生徒が来た時にはうまく活用しながら、指導していこうと思います。
また、近年ではおおよその数を把握することが困難な理由には視覚能力が弱い可能性が示唆されており、数に関するトレーニングではなく、視覚形態知覚を高めるトレーニング自体有効である可能性があります(Cheng et al., 2020)。
視覚形態知覚は注意深く形態を観察することで高まることが知られており(Salome & Szeto, 1976)、そのことを踏まえると、間違い探しゲームなど、形態に注意を向けるゲームを用いることで、おおよその数の把握の機能が向上することも考えられます。
なので、こんなアプリ(間違い探しーすべて見つけましょう)で遊びながら、機能をトレーニングしてあげる良いかなと思います。
参考文献
Cheng, D., Xiao, Q., Cui, J., Chen, C., Zeng, J., Chen, Q., & Zhou, X. (2020). Short-term numerosity training promotes symbolic arithmetic in children with developmental dyscalculia: The mediating role of visual form perception. Developmental science, 23(4), e12910.
Hyde, D. C., Khanum, S., & Spelke, E. S. (2014). Brief non-symbolic, approximate number practice enhances subsequent exact symbolic arithmetic in children. Cognition, 131(1), 92–107.
Piazza, M., Facoetti, A., Trussardi, A. N., Berteletti, I., Conte, S., Lucangeli, D., Dehaene, S., & Zorzi, M. (2010). Developmental trajectory of number acuity reveals a severe impairment in developmental dyscalculia. Cognition, 116(1), 33–41.
Salome, R. A., & Szeto, J. W. (1976). The Effects of Search Practice and Perceptual Training upon Representational Drawing. Studies in Art Education, 18(1), 49–54
Van Herwegen, J., Costa, H. M., & Passolunghi, M. C. (2017). Improving approximate number sense abilities in preschoolers: PLUS games. School Psychology Quarterly, 32(4), 497–508.
Von Aster, M.G. and Shalev, R.S. (2007), Number development and developmental dyscalculia. Developmental Medicine & Child Neurology, 49: 868-873.
Wilson, A. J., Revkin, S. K., Cohen, D., Cohen, L., & Dehaene, S. (2006). An open trial assessment of “The Number Race”, an adaptive computer game for remediation of dyscalculia. Behavioral and brain functions : BBF, 2, 20.