総合的な探究の時間

総合的な探究の時間で求められることは実証だけで良いのか?

 現在、探究学習の重要性が強調されており(文部科学省, 2018)、それに伴い多くの授業で探究学習が実践されてきている。日本においては、探究学習は大きく二つに分化している。一つは、教科の深い理解を目的とする「教科探究」。もう一つは、教科の枠を超え、「自己と一体で不可分な課題」を対象にする「総合的な探究の時間」である(文部科学省, 2018)。本記事では、後者の「総合的な探究の時間」における取り組みについて検討する。

 「総合的な探究の時間」においては、生徒が自らの手で実証することに過度な価値を置く傾向が見受けられる。さらに、先行研究など既に明らかになっている事実を把握せずに実証を行う「とりあえず実証主義」も少なくない。この進め方は、実証技術の習得を目的とする場合には有効であるが、効率的に知識を獲得し、得られた知見をもとに新たな問いを生み出す探究サイクルを前提とする場合には非効率である。そもそも総合的な探究の時間で育成すべきスキルは、実社会で応用可能であることを目的としている。しかし「とりあえず実証主義」は、既知の事実を確認せずに独自に検証を行うため、実社会では時間や資源の浪費につながりやすく、有効に機能しない。したがって、このような進め方は是正すべきである。

 こうした傾向は、理科教育で長年重視されてきた科学的探究モデルの影響を受けている可能性がある。理科教育における探究では、実験や観察を通じてオリジナルデータを収集する「調査可能な問い(investigable question)」を作成する支援が盛んに行われてきた(Chin, 2002; Muhamad & Mat Noor, 2020)。

 しかし、「総合的な探究の時間」においては、実証スキルの獲得だけでなく、先述した通り、既存の知見を効率的に取り入れることも同様に重要である。したがって、先行研究の調査は探究学習に不可欠なプロセスであり、理解や情報収集に困難を抱える生徒に対しては、適切な支援が必要である。

引用文献
Chin, C. (2002). Open investigations in science: Posing problems and asking investigative questions. Teaching and Learning, 23(2), 155-166.
Muhamad Dah, N., & Mat Noor, M. S. A. (2021). Facilitating Pupils’ Questioning Skills in Open Inquiry Learning Through an Investigable Question Formulation Technique (IQFT). Journal of Mathematics and Science Teacher, 1(2), em005. https://doi.org/10.29333/mathsciteacher/11283
文部科学省(2018)高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編

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